2020年6月議会における、後藤香織の一般質問の内容です。

2020.6.16「未成年の予期せぬ・望まない妊娠の防止について」

▶後藤香織

次に「未成年の予期せぬ・望まない妊娠の防止について」お伺いします。

2019年に日本産婦人科医会が発表した「性教育の現状と問題点」によると、中絶選択率は全年齢で15%であるのに対し、5歳階級別で見た場合、20歳未満の未成年が最も高く59%と約6割が人工妊娠中絶を選択しています。

未成年の人工妊娠中絶においては、心身共に及ぼす影響が大変大きいことは明らかです。中絶を選択せざるを得なかった要因として、デートDVや性暴力、性に関する誤った知識や知識の不足などが考えられます。

このような予期せぬ・望まない妊娠を防ぐには、それらの要因ごとに対応をし、社会全体で防止の取り組みをしていかなければなりません。そこで、今回は未成年の妊娠の実態とそれらの要因ごとの防止のための取組について伺います。

まずは未成年の妊娠の実態について2点お伺いします。
一般的に、未成年の妊娠についての相談は、長期休暇の後などに多いとされています。今回は新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、約2ヶ月半にもわたり、学校が休校となりました。

休校が解除された今後、未成年の予期せぬ・望まない妊娠が一気に顕在化し、急増するのではないかと危惧しているところです。
そこで、知事にお尋ねします。

思いがけない妊娠や子育てなどの相談窓口である「にんしんSOSふくおか」では全国での休校が始まった3月以降10代の相談件数はこれまでと比較してどのようになっているのか、相談内容はどのようなものだったのか併せてお伺いします。

 

▶知事

「にんしんSOSふくおか」は、電話やメールにより、思いがけない妊娠や子育てに関する相談に対応しています。
本年3月から5月に、妊娠に関する相談を行った308名のうち、10代は109名で、昨年同期の1.4倍に増えています。

その多くが、生理の遅れ、妊娠検査薬の判定結果についての疑問等、妊娠したのではないかという不安と関連した内容となっています。

 

▶後藤香織

本県の保健統計年表をみると、15~19歳人口に占める10代の中絶件数は高い割合となっています。特に、本県においては、2015年度では、10代の人口妊娠中絶率は全国47都道府県中、最も高い割合でした。

そこで2点目に、本県における10代の人口妊娠中絶率は、2016年度以降直近ではどのような状況かお示しください。また、その実態について知事はどう認識しているのかお聞きします。

 

▶知事

本県における10代の人工妊娠中絶実施率は、平成28年度0.78%、29年度0.82%、30年度0.8%となっており、いずれも全国で最も高くなっています。

10代の人工妊娠中絶は、その多くが、予期しない、望まない妊娠の結果であると考えられ、体だけでなく、心にも大きな影響を与えるものであり、深刻な課題であると認識しています。

 

▶後藤香織

次に、要因ごとの対応策についてお伺いします。
先ほども申し上げたように、予期しない・望まない妊娠には、様々な要因があります。性暴力については、2月の一般質問でお尋ねしました。

そこで今回は、デートDVについてお尋ねします。交際相手からの性行為の強要や避妊に協力しないといったことは、予期しない・望まない妊娠にもつながります。これは交際相手から殴られたり、束縛されるなどと同じデートDVの一つです。

このデートDVについての認知度は、県が昨年度実施した男女共同参画社会に向けての意識調査によると、61.4%と決して高い数値とはいえません。デートDVによる若者の予期しない・望まない妊娠を防ぐためには、交際相手からの性的暴力の防止が必要です。

そこで、知事にお伺いします。デートDVについて若者に対して、これまでどのような取組を行ってきたのか、また今後どのように取り組むのか、お伺いします。

 

▶知事

県では、平成26年度から、すべての高校1年生を対象に、デートDVについて分かりやすく説明した冊子を配布し、人権教育の授業やホームルームなどで活用されているところであります。

また、30年度からは、デートDVの低年齢化に対応するため、対象を中学1年生にも拡大したところであります。

さらに希望する学校に対しては、専門知識を有する講師を派遣し、談義やグループワークを通じて、デートDVの被害者にも加害者にもならないよう、中学生や高校生の理解促進に努めています。

これらに加えて、今年度からは、性暴力根絶条例に基づき実施するアドバイザー派遣事業においても、小、中、高等学校などで、児童・生徒の発達段階に応じ、デートDVを含む性暴力について教育することとしています。

 

▶後藤香織

次に、コロナ休校の影響でさらなる遅れが懸念されている性教育について2点、お伺いします。2017年6月定例会で、わが会派の大田京子議員が「学校現場における性に関する学習指導のあり方」について質問しました。

そこで1点目に、県教育委員会では、その後、どのような取り組みを行い、またそれによりどのような成果があったと認識しているのか、教育長にお伺いします。

 

▶教育長

県教育委員会では、平成30年度から、大学教授や医師などで構成される性に関する指導推進委員会を設置し、発達段階や個に応じた効果的な指導法などについて協議しています。

また、県立高校に産婦人科医等を派遣する性と心の健康相談事業に加え、平成30年度からは新たに公立中学等にも派遣する性に関する指導推進事業を開始し、プライバシーに配慮した個別相談の充実を図っています。

その結果、公立中学校では、産婦人科医による個別相談から医療機関の受診につながる件数が、平成29年度の17件から昨年度は47件に増加するなど、関係機関と連携した対応が図られてきていると認識しています。

 

▶後藤香織

次に、包括的な性教育の必要性についてお聞きします。

学習指導要領を見ると、小学5年生の理科では「受精に至る過程は取り扱わない」、中学1年の保健体育科では「妊娠の経過は取り扱わない」と書かれており、性行動については取り扱わないとの解釈が一般的です。

しかし、これは、性行動が活発になる前に正しい知識を教えることが子どもの心身を守り、性感染症も防ぐという国際的な考え方とは大きくずれています。

この考え方は、国連教育科学文化機関 ユネスコが示した包括的性教育の国際ガイダンス「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」によるものです。

ユネスコは、最新の科学的エビデンスに基づき、性教育を人権とジェンダーの平等という枠組みの中に位置づけており、2009年以降、世界各地で得られた様々な教訓を踏まえ、2018年にこの内容を改定しました。

この国際ガイダンスは欧米諸国だけでなく、中国、韓国、台湾などアジア諸国でも受け入れられているのが現状です。

その中では5~18歳まで、およそ3歳ごとの各発達段階に即した学習目標を作っており、具体的には、

9~12歳では、どのように妊娠するのか、基本的な避妊方法について確認したり、12~15歳では、避妊の様々な方法の有効率、効果、副作用など、コンドームや緊急避妊ピルなど
について教えることとなっており、日本の性に関する指導の内容とは大きく異なっています。

一方、2018年日本財団の調査では、17~19歳の性に関する情報源は、Webサイトが55.8%で最も多く、SNSが31.4%で、サイトとSNSを合わせると実に87.2%がインターネットから情報を得ていることになり、性に関する間違った情報を得てしまっている可能性も十分に考えられます。

正しい情報を知らないまま、インターネットからのフェイク情報、性差別的・暴力的な性描写などに翻弄され、JKビジネスやアダルトビデオなどの性売買も横行する中、消費される商品としても巻き込まれかねません。

現代の未成年は様々な性的被害にあいやすい状況におかれているにもかかわらず、性について学ぶ権利が保障されていないといえるのではないでしょうか。

未成年の予期せぬ・望まない妊娠を避けるためにも、また性暴力の加害者となってしまわないためにも、性行動が活発になる前に、正しい知識を得ることが必要であり、人間の尊厳を中心に置いた、学校での包括的な性教育が重要だと考えます。

そこで、2点目に、こういった包括的な性に関する知識の習得の必要性について、どのように考えるのか、併せて、そのための取組みについて教育長にお聞きします。

 

▶教育長

学校における性に関する指導は、学習指導要領に基づき、科学的知識を身に付けさせるとともに、性に関する情報等を正しく選択し適切に行動できる能力や、自己を大切にし他者を尊重する態度などを育むことが重要であります。

また、性に関する生徒、保護者の情報量や意識等には個人差があるため、一律の指導と併せて個別の指導を充実していく必要があると考えています。

このため、産婦人科医等を活用した指導を引き続き推進していくとともに、発達段階や個に応じた効果的な指導法をまとめた指導資料を改訂し、各学校へ普及してまいります。

 

▶後藤香織

答弁を受けて要望をさせていただきます。

また、未成年の予期せぬ・望まない妊娠の防止についてでは、
10代の人口妊娠中絶率は、本県議会で初めて取り上げられた2015年度のデータ以降、少なくとも4年連続でワースト1位であることが明らかとなりました。

このことを踏まえても本県における包括的性教育を本格的に進める時期に来ていると思います。
先ほど教育長から「発達段階や個に応じた効果的な指導法をまとめた指導資料を改訂し、各学校へ普及する」との答弁がありました。

この指導資料改訂の際には、
性に関する相談窓口を掲載して、指導教員より児童生徒へ周知することや、「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に基づき、県教委だけでなく、性暴力被害者センターふくおかや本県男女共同参画推進課、生活安全課などがこれまでに取り組まれた知見をもとに部局横断的に改訂に取り組んでいただくよう要望します。

さらに未成年の予期しない・望まない妊娠を防ぐために、学習指導要領そのものを「国際セクシュアリティガイダンス」の内容を踏まえたものに改定するよう国へ働きかけていただきますよう、県としての本気の取り組みを強く要望して、私の一般質問を終わらせていただきます。

ご清聴ありがとうございました。

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