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2025年6月定例会・予算特別委員会における私の質問、「農産物のブランド力および人材育成の強化について」の内容です。

2025.6.26

「あまおう」ブランド保護の対応について

▶後藤香織

ふくおか政策の会の後藤香織です。

「農産物のブランド力と人材育成強化について」お聞きします。

まずは、本県ブランド農産物の代表とも言えるイチゴ「あまおう」についてお聞きします。

あまおう(品種名・福岡S6号)は、福岡県農林業総合試験場が開発し、県もJAも農家も一丸となった総力戦であまおう普及に取り組み、2003年度の本格販売から20年連続で販売単価日本一を達成したブランド品種となりました。

しかし、2005年1月に取得した生産や販売の権利が20年間保護される「育成者権」の期限が今年1月に切れました。

このことにより、制度的には「あまおう」の名は、福岡県内でしか使用できないものの、県外でも、名前を変えれば、育成・販売は可能となり、多くのイチゴ農家の方々も不安を抱いているとお聞きしています。

ここで、あらかじめ「『あまおう』ブランド保護の対応について」「福岡県農林業総合試験場および福岡県農業大学校について」の2つの資料を執行部に要求しております。

そのうち、「あまおう」ブランド保護の対応について、ご説明をお願いいたします。

 

▶農林水産部 農林水産政策課 課長

〇要求資料 「『あまおう』ブランド保護の対応について」

0626要求資料「『あまおう』ブランド保護の対応について」

 

まず、1番の左の図になりますが、これまでは、県が持つ、苗の生産などを許諾する育成者権と、JA全農が持つ「あまおう」という名称の使用を許諾する商標権の2つの知的財産権でブランドを保護してきました。

令和7年1月に育成者権が切れた後は、右の図になりますが、「あまおう」という名称は商標権により保護されており、JA全農が「あまおう」という商標の使用を県内の生産者に限定することで、引き続き、福岡県独自のブランドとして保護していきます。

次に、2について、各地域のJAが商標「あまおう」の使用許諾を生産者と契約する際の主な遵守事項となっています。

最後に3について、商標権を侵害した場合の商標法に基づく刑事罰等になっています。

 

本県が把握している「あまおう」の苗の県外流出件数と偽造に関連する事案等について

▶後藤香織

ことし1月以降は、要求資料の通り「あまおう」という名称の商標権保護や、苗の供給先をJA全農ふくれんに限定し、生産者と誓約書をかわし、苗の流出を防ぐ取組を行っているとのことでした。

しかし、やむをえないとは思いますが、性善説にたった対策であり、私としては法的拘束力が不足しており、更なる対応が必要ではないかと考えます。

過去には「シャインマスカット」は無断で海外に持ち出され、中国で農地が日本の30倍に拡大、山形県が開発したサクランボ「紅秀峰(こうしゅうほう)」はオーストラリアに流出し、日本への輸出まで計画される事態になりました。

あまおうについても、これまでに「苗が福岡県外に流出したり、別の品種をあまおうと偽造していたりする事案がすでに発生している」と一部報道されています。

そこで、本県が把握しているあまおうの苗の県外流出件数と、偽造に関連する事案等について、どのようなものがあったのか、お示しください。

 

▶農林水産部 農林水産政策課 課長

農林業総合試験場内に設置している農林産物知的財産権センターでは違法に苗が販売されていないかインターネット上で監視を行っています。

苗の県外流出については、平成15年と平成18年に他県で生産されるという事案がありましたが、生産者に侵害行為の停止を求め、苗は廃棄されました。

また直近では、令和3年度に県外の直売所において「あまおう」の名称で苗を出品している事例がありました。

この事例は、商標「あまおう」の使用が福岡県内で生産された果実等に限定されていることについての認識が不足していたもので、JA全農ふくれんから当該生産者に対し、商標使用について法令順守を指摘したところ、出品が取り下げられました。

 

苗の流出防止対策の予算、事業内容及びその効果について

▶後藤香織

事案はあったものの、農林産物知的財産権センターで監視を行った結果、不正な苗については廃棄、県外での出品の取り下げを行ったとのことで、あまおうの苗を守るための努力をされていることがわかりました。

今年度予算でも、新規事業として「あまおう」の競争力を集中強化」として、1億653万円の予算がついています。

「あまおう」のブランド力をさらに高めるため、生産、輸送、販売を集中的に強化することや、苗の流出防止対策を実施するための予算とのことですが、

苗の流出防止対策には、どのくらいの予算を使い、どんなことを実施する予定でしょうか。また、その効果をどのように見込んでいるのか、お聞かせください。

 

▶農林水産部 農林水産政策課 課長

令和7年度当初予算において、「あまおう」の苗の流出防止対策として415万円余をお願いしています。

事業内容としては3つあり、

1つ目は全生産者を対象としたブランド保護の重要性に関する研修会の開催、

2つ目はネット調査などによる海外における監視体制の強化、

3つ目は海外における「あまおう」の商標登録の推進

を行います。

生産者がブランド保護の重要性や県外へ流出した際の損失について更に理解を深めてもらい、「あまおう」という商標の使用を県内生産者に限定することに加え、海外での監視を強化することで、苗の県外・国外流出防止に効果があると考えています。

 

▶後藤香織

今年度は、特に海外への流出防止に向けて、対策を強化されるということで「あまおう」ブランドをしっかり守っていただきますよう、お願いいたします。

2024年12月には、フリマサイトにてイチゴの苗を無断で販売するなどしたとして、種苗法違反で農業者を含む12人が逮捕・書類送検された事件もありました。

「あまおう」は育成者権が切れたため、種苗法違反とはなりませんが、個人で安易に出品できるのも事実です。

今後は、農林産物知的財産権センターでのネット上の監視の強化をお願いします。

また、今後は、例えば、警察との連携や通報制度なども必要だと思いますので、要望させていただきます。

 

福岡県農林業総合試験場の5年間の予算の推移、新品種開発の予算について

▶後藤香織

知事は2期目の選挙の際「これからの挑戦」として「いちご、米などの新品種の開発」を挙げています。

このように、多くの農産物のブランド力強化が求められる中で、開発予算が十分にあるのか、気になるところです。

そこでここからは、要求資料の「福岡県農林業総合試験場および福岡県農業大学校について」をもとに、あまおうを開発した「福岡県農林業総合試験場」についてお聞きしていきます。

福岡県農林業総合試験場の5年間の予算の推移についてご説明をお願いします。併せて、予算のうち、新品種の開発にはどのくらい予算が計上されているのか、お示しください。

 

▶農林水産部 農林水産政策課 課長

〇要求資料「福岡県農林業総合試験場および福岡県農業大学校について」

0626要求資料「福岡県農林業総合試験場および福岡県農業大学校について」

 

要求資料の農林業総合試験場当初予算額の推移について、直近5年では、予算額は約6億から8億円台で推移しています。

このうち研究費については、5億円前後で推移していますが、令和3年度は、他の団体と共同で行う研究の代表団体となり、委託費を一括して受領したことで国庫受託費が増加しています。

次に、新品種の開発に係る予算についてであります。

新品種の開発には、優良な特性を持つ品種を交配し、数千、数万種類の系統の中から選抜していくため、長い時間を要します。

このため、初めの段階では、栽培特性や遺伝子特性などで選抜を繰り返し、有望な系統の絞り込みを行います。

そして、有望な系統が絞り込まれた段階で、特別研究費により集中的・加速的に開発を進めています。

例えば、本県オリジナルの大豆新品種「ちくしB5号(ふくよかまる)」の場合は、5年間で3千100万円余となっています。

 

▶後藤香織

新品種開発などのための特別研究費の増加、県単事業の経常研究費が増えており、県が新品種開発に力を入れていることがわかりました。

一方で、研究費の民間等受託費が減少していることや、管理費が増えている点が気になります。

今後、研究費の予算がしっかり確保されるよう、よろしくお願いいたします。

 

福岡県農業大学校の法的根拠等について

▶後藤香織

さて、福岡県農林業総合試験場は、隣接する福岡県農業大学校に、講義や実習を通じて最新の栽培技術や研究成果等を提供。

福岡県農業大学校は、本県農業の次世代育成の貴重な学校であります。

そもそも福岡県農業大学校とは、法的にどのような学校なのか、教えてください。併せて、ご説明いただいていた要求資料の2.農業大学校についてもご説明ください。

 

▶農林水産部 経営技術支援課 後継人材育成室

〇要求資料「福岡県農林業総合試験場および福岡県農業大学校について」

0626要求資料「福岡県農林業総合試験場および福岡県農業大学校について」

 

本県農業大学校は、農業改良助長法に規定される農業者研修教育施設であります。

農業大学校の概要でありますが、次代の農業及び農村社会を担うのにふさわしい優れた農業の担い手及び農業技術指導者の養成並びに農業者等の高度技術研修を行うことを目的としています。

(2)の教職員数は、5年間変わらず36人となっています。

(3)の学生数でありますが、現在、農業大学校では、就農の意欲を有している方や、農業技術指導者を志している方を対象とする2年間の養成科と、Uターン等による就農希望者を対象とする1年間の研修科を設けています。

養成科と研修科合わせて100人程度で推移しています。

(4)の校納金は、養成科については、入寮生で、海外研修を選択した場合、教材費、寮での食費を含め、2年間で119万円余となっています。

また、研修科については、校納金はありません。

なお、いずれも、入学金、授業料は無料となっています。

 

学生の卒業後の進路について

▶後藤香織

農林水産省所管の農業改良助長法に基づく「農業者研修教育施設」であるということで、施設整備費の補助などといった国からの支援もあると認識しています。

学生は、毎年100名以上の生徒が在籍していますが、 学生の卒業後の進路はどうなっているのでしょうか、教えてください。

 

▶農林水産部 経営技術支援課 後継人材育成室

養成科の卒業生は、5割程度が就農しています。

他は、農業機械メーカーなどの企業や、JA、公務員等に就職しています。

研修科の卒業生は、ほぼ全員が就農しています。

 

福岡県農業大学校へ専修学校の機能を追加することの検討について

▶後藤香織

入学金・授業料が無料で、即戦力となる担い手を育成するため、その多くが就農している現状がわかりました。

先ほど、ご説明あったように、農業大学校は「農業者研修教育施設」ということで、いわゆる文科省所管の学校ではありません。

これが、専修学校であれば、卒業生に「専門士」の称号が付与されるため、4年制大学への編入学が可能となり、海外でも通用する日本の学歴となり、留学等も可能で、就職面でも有利になるなど、学生の進路の選択肢が増えます。

金銭面でいえば、農業大学校では利用することができない「高等教育の修学支援新制度」や、一般的な学生が利用する、これは海外研修の費用としても使えますが、(独)日本学生支援機構の奨学金も利用できるようになるなどメリットが大きいと考えます。他

にも、例えば、外国人が入学する際には「留学」ビザを取得しやすくなります。

そこで、福岡県農業大学校にも専修学校の機能を追加することを検討してはいかがでしょうか。

 

▶農林水産部 経営技術支援課 後継人材育成室長

本県の農業大学校は、農業の担い手として即戦力となる人材の育成を目指して設立したものであり、農業実習に重点を置き、その実習時間はカリキュラムの5割を占めています。

しかし、専修学校となった場合、大学への編入を見据えた教養講座の開設などが必須となり、教養を含めた理論の学修が多くなるため、実習の時間が削減されます。

また、教養講座の講師の確保により、現在無償としている授業料が発生します。

いずれにしても、専修学校となった場合、農業大学校の本来の目的である農業の担い手として即戦力となる人材の育成を達成することは難しいと考えています。

なお、県は、国の就農準備資金制度を活用し、就農を希望する学生に対し、就農前の所得確保についても支援しており、返還が必要な奨学金以上のメリットがあると考えています。

 

▶後藤香織

福岡県の方向性、大切にしたい部分から考えた場合に専修学校の機能を追加することは難しいということでした。

しかし、私が調べたところ、全国に42都道府県にある農業大学校のうち、34校が専修学校としても、県知事認可を取っています。

全国的にみれば、農業大学校に専修学校の機能を追加しているところが多いです。

山形県と静岡県に関しては、専門職大学として運営されています。

本県農業に係る人材育成強化の面では、ぜひ今後も農業大学校の教育機関としての在り方について、ご検討いただけたらと思います。

 

農産物のブランド力と人材育成強化に向けた部長の決意

▶後藤香織

最後に、農産物のブランド力と人材育成強化に向けた部長の決意をお聞かせください。

よろしくお願いします。

 

▶農林水産部 部長

農産物のブランド力強化として、「あまおう」については、県では、JA全農ふくれんと連携し、県外での生産や名称使用が行われないよう、苗の供給と、ふくれんが持つ「あまおう」という商標の使用を県内の生産者に限定することで、引き続き、「あまおう」を保護していきます。

加えて、ブランド力の更なる強化に向けて、高品質な「あまおう」を生産するための栽培技術の実証に取り組むとともに、プロモーションやフェアの開催など、今後も生産・販売拡大の取組を進めていきます。

次に、人材育成強化として、農業大学校において、農業経営に必要な知識や技術を習得できるよう、引き続き、生産から販売まで、実習中心に学習を行い、即戦力となる人材を育成していきます。

加えて、地域のJAが設置しているトレーニングファームのカリキュラムを充実し、就農前に実践的な栽培技術や経営管理能力を習得するための支援を行っていきます。

さらに、雇用就農を希望される方を対象に、実際に農業現場で農作業を経験できる「トライアル就農」を実施し、雇用の確保や定着率の向上も図っていきます。

今後とも、こうした取組を通じ、農産物のブランド力と人材育成強化に努めていきます。

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