2022年9月定例会・決算特別委員会における後藤香織の質問内容です。

2022.10.3「妊娠期から子育て期までの切れ目のない母子支援について」

 ▶後藤香織

民主県政クラブ県議団の後藤香織です。妊娠期から子育て期までの切れ目ない母子支援についてお聞きします。

 近年、少子化や核家族化の進行、地域のつながりの希薄化など、社会環境が変化し、子育ての責任が母親に過度に偏ることで、孤独な「孤育て」に悩む方が増えています。こういった環境が、心身に影響を及ぼし、産後うつを引き起こす要因の1つとなっているといわれています。

国立成育医療研究センターの「人口動態統計から見る妊娠中・産後の死亡の現状」によると2015年から2016年の2年間で死産後の自殺を除き、産後1年以内に自殺した女性は全国で92名で、初産の方が60人で65%を占めていた、とのことです。

 さらに、新型コロナウイルスの影響で産後うつが以前の2倍以上に増えているおそれがあることが筑波大学の研究者の調査で分かりました。「産後うつ」の可能性があるとされた母親のうち半数以上は自身が危険な状態にあることを認識できておらず、積極的な支援の必要性が指摘されています。

内閣府も2013年の「少子化危機突破のための緊急対策」で、「産院退院後の悩みや孤立からもたらされる育児不安等は、第2子以降の出生行動に影響を与えうる」また「児童虐待の問題にも関わっている」と指摘しています。このため「退院後の母子にできる限り早期の接触を図り、必要な支援につなげることが必要である」と、産後ケアの強化が提言されました。「少子化社会対策大綱」でも産後ケアの充実が盛り込まれ、その重要性が認知されてきたところです。

ここで、母子保健に関する近年の動きをみると、2016年の母子保健法改正により、本県でもすべての市町村に「子育て世代包括支援センター」が設置され、利用者の立場から、関係機関の間で、より切れ目のない連携をはかる体制が整いました。

また、2019年12月には、母子保健法の一部が改正され、出産後1年以内の母親と乳児に対する産後ケア事業が実施努力義務として法定化され、2021年4月施行されました。第4次少子化社会対策大綱においては改正法を踏まえ、産後ケア事業については、2024年度までに全国展開をめざすとされました。 

そこで今回は産後ケア事業の現状についてお聞きしていきます。委員長、ここで、あらかじめ「県内における産後ケア事業の実施市町村の状況について」資料要求しております。委員会配布のお取りはからいをお願いいたします。

それでは「産後ケア事業」の目的とその概要も踏まえ、配付資料のご説明をお願いします。

(資料配布)

 

 

 

 

 

 

▶健康増進課長 答弁

 産後ケア事業は、出産後の母親の心身のケアや育児のサポート等により、出産後も安心して子育てができるよう支援することを目的としております。事業の概要ですが、配付資料にございますように、本年7月1日時点で、51市町村が事業を実施しております。

出産後1年未満の母親と乳児を対象に、病院などの空きベッドを活用して、母親に休養の機会を提供する「短期入所型」、日中、来所した母親への育児指導や相談等を行う「通所型」、助産師等が自宅を訪問して個別に授乳等の支援を行う「居宅訪問型」の3つの種類があり、それぞれの種類ごとに、施設数、利用者数、対象時期について記載しております。

 

▶後藤香織

 ご説明にあったように、この資料には、対象時期についても記載しています。産婦の自殺は出産後5カ月以降にも認められるなど、出産後1年を通じてメンタルヘルスケアの重要性が高いことから、2021年度の法改正により、「出産直後~4カ月まで」だった対象時期が「出産後1年」へと拡大されました。

そこで、現状では出産後4カ月以降の母親と乳児への対応がすすんでいない市町村も見られますが、どのような課題があり、どのように対応しようと考えているのか、お聞きします。

 

▶健康増進課長 答弁

出産後4か月以降を対象としていない市町に確認したところ、対象時期の拡大により利用者が増えた場合、委託している医療機関等の利用スペースや人員では対応できないこと、特に動きが活発になり、目が離せない4か月以降の乳児への対応が難しいなどの課題があることがわかりました。県としましては、産後ケア事業の充実を図るため、これらの市町の近隣市町村が委託している医療機関等の情報提供などを行うことにより、対象時期の拡大を働きかけてまいります。

 

▶後藤香織

 対象時期の拡大を働きかけるとのことで、ぜひよろしくお願いいたします。次に、利用者への周知について伺います。利用実績についても先ほどの資料にもありますが、県下で4万人程度の赤ちゃんが出生することを踏まえると、もっと多くの方に利用していただきたいと思っています。

そこで、利用されてこその事業だと思いますが、実施自治体においては、妊婦の皆さんにどのように周知を図っているのでしょうか。また県としてはどのようにそれをサポートしていくつもりでしょうか、お答えください。

 

 ▶健康増進課長 答弁

 市町村では、ホームページや広報誌への掲載はもとより、母子健康手帳交付時等にリーフレット等を配布し、妊婦の方に直接説明する等、様々な機会を捉えて周知していると伺っております。県としましても、市町村が実施する産後ケア事業等の情報を、県のホームページに掲載するとともに、県が発行する低出生体重児向け小冊子「ふくおか小さな赤ちゃん親子手帳」などにも掲載し、県民の皆様が必要な情報を受け取れるよう周知を図ってまいります。

 

 ▶後藤香織

 新たに、県のHPなどで周知を図っていくとのことで、ぜひよろしくお願いします。産後ケア事業を実施できる施設には、病院、助産所等があるかと思いますが、この資料からもわかる通り、運営事業者の数が十分でないという課題もあります。実際にこの事業を運営するとある施設の方からは、費用対効果や体制整備の面で運営が厳しいとの声も聞いたところです。

また、県内に住んでいながら、市町村によって、制度がなかったり、受けられるサービスが異なっている現状です。利用する立場からみれば、自治体によって利用金額に差があり、自己負担が高く、必要な人が利用できていないケースもあり、またサービスを提供する自治体からみれば、単独での産後ケア事業の実施が困難な市町村があることも推測されます。この事業が努力義務化され、2024年度までに全国展開する経緯や背景をみても、県内の全ての母子がサービスを受けることができる環境が必要だと考えます。

そこで、県は、事業を実施していない市町村の状況は把握されてるのでしょうか、また、事業の実施に向けて、県はどのような形で市町村を支援しているのでしょうか。(※妊娠・出産包括支援推進事業の実績も)

 

▶健康増進課長 答弁

県内で産後ケア事業を実施していないのは、9市町であり、事業を委託できる医療機関等が身近な地域にないことや、具体的な実施方法がわからないことなどの課題があると把握しております。

このため、県では、先行自治体の実施方法等を紹介するなど、事業開始に向けた支援を行っております。また、学識経験者や関係団体の代表者等で構成する「福岡県妊娠・出産包括支援体制整備検討会議」において、課題を報告したところ、市町村に身近な保健所を活用して、委託できる医療機関等の情報を市町村に提供することを助言いただきました。

県としましては、今後、これまでの取組に加え、医療機関等の情報を提供するなど、保健所と協力して、市町村の支援を行ってまいります。

 

▶後藤香織

次に、産後ケア事業の広域的な運営についてお伺いします。

厚労省は今年8月に行った産後ケア事業に関するヒアリング結果を公表しました。それによると、産後ケア事業の運営について、「退院時や産婦健診で支援が必要と思われる方がいても、医療機関から市町村に連携がない」「保健師によるアセスメント内容や実施したケア内容に関して県内統一した書式の用意がいる」「ガイドライン等で安全性とケアの質を担保する基準が必要」などの意見が出されたようです。

そこで、要支援対象者の情報共有について、医療機関と市町村、委託先と市町村との連携体制はどうなっているのか、お聞かせください。また、そのためのガイドラインやマニュアルを県が作成し、広域的な運営のための連携を推進すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 

 ▶健康増進課長 答弁

 支援が必要な方に対しては、県内全市町村に設置された「子育て世代包括支援センター」において作成される支援プランに基づき、産科や精神科等の医療機関や、委託先の医療機関などと情報共有するなど、適切な支援につながるよう連携を図っております。

 また、県では、支援が必要な方を妊娠初期から把握し、早期に支援を行う「妊娠期からのケアサポート事業」において、市町村と医療機関等の情報共有の方法や支援の流れなどについて、マニュアルを整備し、広域的に連携しながら支援に取り組んでおります。

 

▶後藤香織

ここからは他県の事例になりますが、例えば、山梨県では、2016年に県、及び県内27市町村からなる「産後ケア事業推進委員会」が学校法人健康科学大学に委託し、「産前・産後ケアセンター」を開所し、宿泊型の産後ケア事業を行っています。

 県内在住者はもとより、県外在住者でも里帰り出産や産後滞在者が利用できるようになっており、その他、研修会や啓発事業等「山梨型ネウボラ事業」として、全国知事会の先進政策バンクにて人口減少対策の好事例として紹介をされているすばらしいモデルケースだと思います。市町村だけでなく、県も実施することで、県内に住む全ての母子に支援の機会が与えられています。

そこで、福岡県もこういった事例を参考にして「産前・産後ケアセンター」を設置し、県および全60市町村協働による支援体制を構築するなど、市町村域を超えた支援体制の構築に取り組む必要があると考えますが、いかがでしょうか。

 

 ▶健康増進課長 答弁

産後ケア事業を実施していない9市町は、全て、令和6年度末までの事業実施を検討していると把握しております。県としましては、9市町の意向に沿った形で、産後ケア事業が開始できるよう、進捗状況を確認しながら、必要な支援を行ってまいります。

 

▶後藤香織

また、県内には、産後ケアを、どこの施設でも受けられる仕組みを構築している市町もあります。市町村域を越えた支援体制の構築が図られるよう、この仕組みを好事例として、他の市町村に情報提供をしてまいります。市町村域を超えた支援体制の構築を図っていくとのことで、ぜひこちらもよろしくお願いします。

実際に、現状の産後ケア事業を利用した方からは、事前見学や申請登録など、本当に利用したい時に利用できない、利用料が高い、などの声も聞いています。今後、県下で支援体制が構築されていくことと思います。その際は、ニーズをよく調査をしていただき、利用料の軽減であったり、例えば、クーポン券などのような より利用しやすい制度も整えていくことをあわせて要望させていただきます。

最後に、妊娠期から子育て期までの切れ目のない母子支援については、必要な方が必要な支援を受けられる体制を福岡県内に地域格差なく構築することが重要だと考えます。部長の決意をお願いします。

 

 ▶保健医療介護部長

核家族化や地域のつながりの希薄化等により、産前産後の身体的、精神的にも不安定な時期に、身近な人の助けが十分に得られず、不安や負担を抱えている妊産婦が増えています。

妊産婦の孤立を防ぎ、健やかな育児を行っていただくには、生活されている地域はもとより、里帰り出産等をされる場合も含め、どの市町村においても、妊産婦の心身のケアや育児のサポート等の支援を受けられることは重要と考えております。

このため、まずは、産後ケア事業の県内全市町村の実施に向けて、先ほど課長が申し上げた、医療機関等の情報提供を行うほか、取組が進まない市町村があれば、直接訪問して、現状や課題を伺った上で、助言や支援を行ってまいります。さらに、市町村域を超えた支援体制の構築については、先行自治体の好事例を紹介し、その実現に努めてまいります。これらの取組により、産後ケア事業を推進し、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援体制が充実されるよう、取り組んでまいります。

 

 ▶後藤香織

よろしくお願いします。終わります。

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