12月議会における、後藤香織の一般質問の内容です。

2019.12.11「AYA世代のがん患者支援について」

▶後藤香織

皆さま、こんにちは。民主県政クラブ県議団の後藤香織です。

それでは、通告に従い「AYA世代のがん患者支援について」知事に質問します。

本年10月18日、国立がん研究センターと国立成育医療研究センターが2016年から2017年の2年間で調査をした 院内がん登録「小児・AYA世代がん集計」では、AYA世代いわゆる15歳~39歳のがん患者は、全国で58,837件、そのうち20歳以上では約8割を女性が占める、という衝撃的な結果を発表しました。

全年齢でみた場合のがん罹患数は男性が56.1%、女性が43.9%という割合である一方、20歳~39歳までのがん患者は約8割が女性ということですので、若年層では、女性のがん患者が非常に多いことがわかります。

両センターでは、女性特有のがんである乳がんと子宮頸がんの増加が影響したとし、特に「AYA世代のがん対策を考える際には、性別や年齢によるがん種の違いを考慮すべき」と指摘をしています。

そこで今回はがんの中でも特に乳がんと子宮頸がんに注目して質問をさせていただきます。

まずはじめに、本県におけるAYA世代のがん患者の罹患率とその種別をみますと、2015年の福岡県地域がん登録データでは、人口10万人あたりで、15歳~19歳で14.7人、この年代の女性乳がんと子宮頸がんの罹患はありません。

20歳代では、28.7人、このうち女性乳がんが9%、子宮頸がんが6%と、あわせて15%となっています。30歳代では101.1人、つまり1000人に1人の割合で、このうち女性乳がんが26%、子宮頸がんが13%とあわせて約4割を占めています。

さらにAYA世代の死因に注目すると、2018年の厚労省「人口動態統計月報年計」の「性・年齢階級別にみた主な死因の構成割合」では、女性の悪性新生物(がん)は、

15~24歳で自殺、不慮の事故に次いで3番目、25歳~34歳は自殺に次いで2番目、35~39歳では最も高い割合となっており、AYA世代の死因の大きな要因の1つとなっています。

がんによる死亡率を減少させるには、がんの早期発見、早期治療が重要です。その入り口となる早期発見には検診の受診が欠かせないと思います。

しかし、2016年「国民生活基礎調査」によると、本県の乳がん検診受診率は40.9%で全国38位、子宮頸がん検診受診率は37.9%で全国44位と大変低い結果となっています。そこで、検診受診率向上のための取り組みについて、4点お伺いします。

①1点目に、検診の無料クーポンについてお聞きします。検診受診率向上の取り組みとして、現状、20歳で子宮頸がん検診、40歳で乳がん検診の無料クーポンを市町村が配布していますが、その利用率はどうなっているのかお答えください。
また、この利用率の現状を県はどのように分析しているのかお聞きします。

 

▶知事

本県における平成30年度の利用率は
・子宮頸がん検診が11.8%
・乳がん検診が24.3%
となっており、いずれも低い状況にある。

これら女性のがん検診対策について、本年11月に開催された国のがん検診のあり方に関する検討会では、「検診に関する知識が不足している」「スタッフが女性である方が受診しやすい」などの意見が出されていることから、がん検診に対する正しい知識の普及やがん検診を受けやすい体制づくりが課題と考えている。

 

▶後藤香織

②2点目に無料クーポン券の活用を含め、女性のがん検診受診率向上のために具体的にどのような取り組みをしているのかお聞きします。

 

▶知事

無料クーポン券の利用率が高い市町村においては、クーポン券未使用者に対して、はがきによる再勧奨を行っている。また、女性スタッフのみで検診を行うレディスデーを設けている。

県としては、このような優良事例を、市町村の担当者会議等において情報提供し、より多くの市町村において、こうした取り組みが広がるよう働きかけている。

無料クーポン券の利用促進のためには、県内どこの検診機関でも利用できる広域的な体制を作り、受診者の利便性を図ることが有効である。そのため、検診機関を取りまとめる県医師会と各市町村との間で、無料クーポン券を活用した検診に関する契約を締結している。

また、子宮頸がんについての分かりやすい解説を加えたがん検診の啓発リーフレットを、県が作成し、市町村の成人式や事業所の入社式など、20代が参加する行事の際に配布していただいている。

さらに、従業員やそのご家族に対し、市町村等が実施するがん検診への受診を働きかける事業所を登録、支援する取組みを進めており、登録事業者数は、11月末で、3824となっている。

加えて、「ふくおか健康づくり県民運動」では、現在開発している健康アプリを活用して、がん検診の受診を促してまいる。

 

▶後藤香織

乳がんにおいては、わが国の女性のがんの中で罹患する人が最も多く、死亡原因の上位に位置しています。乳がん検診については40歳から2年に一度定期的に受診することが推奨されていますが、冒頭で紹介した同集計結果の年代別の発生状況をみても、30代から発生しており、40歳からでは遅すぎるのではないかと思われます。

近年では、女優の小林麻央さんが34歳の若さで乳がんで亡くなりました。また、福岡市早良区の高取保育園の卒園生を主人公にした「はなちゃんのみそ汁」で、母親の安武千恵さんが33歳で亡くなったのも乳がんでした。

若年性乳がんがメディア等で取り上げられることで注目・関心も高くなっています。

こういった状況から、AYA世代にあたる40歳未満の乳がんについては、セルフチェックで受診してくださいというのではなく、30歳からに前倒しをしたほうがより効果的で早期発見につながるのではないかと考えます。

実際に京都市など、一部の市町村では、30歳以上の方を対象にマンモグラフィではなく、超音波での乳がん検診を実施しているところもあります。

③そこで3点目に、県としては、県内の市町村へ30歳以上の乳がん検診受診を推奨していくつもりがあるのかお聞きします。

 

▶知事

乳がん検診については、40歳以上を対象に問診及び乳房エックス線検査、いわゆるマンモグラフィ検査を実施している。
これは、国が、がんの罹患率やがん検診の実施による死亡率減少の効果を科学的根拠に基づき検証し、指針に定めたものである。県としては、この国の指針に基づく検査の実施を推奨している。

 

▶後藤香織

次に、がん検査における最先端技術の導入についてお聞きします。最近では、新しいがん検査の方法が話題になっています。

例えば、九大発ベンチャーの(株)ヒロツ・バイオサイエンスが開発中の線虫がん検査「N-NOSE」は、尿1滴で、ほぼ全身の15種類のがんのリスクが約9割、詳しくいうと、

ステージ3〜4で87.8%、ステージ0〜1の早期がんでも87.0%の確率で判定できるとされています。これまでの腫瘍マーカーなどでは、ステージ3~4で約3割~5割、ステージ0~1の早期がんでは約1割の確率であったため、特に早期がんの発見に効果的であるといえます。

何よりこれまでの子宮頸がん検査で行っていた子宮頸部の細胞診といったつらい検査や乳がん検診でのマンモグラフィの痛み、微量ながら被爆の可能性があるといった状況を、N-NOSEで高リスク判定がでた場合だけ受ければよくなり、この検査が導入されることで、検診受診率の向上が期待できると推測します。

④そこで4点目に、こうした研究は、そろそろ実用化も近いのでは、と聞いておりますが、 県はこれまでこの研究に対してどのような支援をしてきたのか、お答えください。

 

▶知事

線虫の優れた嗅覚を活用し、尿によってがんのリスクを判定するこの検査法は、簡便に実施でき、高い精度が期待できることから、がん早期発見の有力な手法と考えられる。

このため、県では、平成28年度から29年度に、消化器がん及び肺がんに対する実証実験への支援を行った。

昨年度からは、乳がんや子宮ガン等様々な種類のがんに対応するための実証実験や、線虫の動きを画像で判断できる装置の開発などに対して支援しており、来年1月には実用化される見込みである。

 

▶後藤香織

次に、がん患者に対する支援についてです。AYA世代にあたる15歳~39歳は、学業、進学、就職、結婚、出産、子育てなどの様々なライフイベントに直面しており、その年代ならではのさまざまな悩みを抱えています。

中でも、2015~2017年の厚生労働科学研究「総合的な思春期・若年成人(AYA)世代のがん対策のあり方に関する研究」のアンケート結果では、高校生や大学生は学校のことが、働く年代の方にとっては仕事が、治療中の大きな課題であるという結果が出ています。

⑤そこで、AYA世代のがん患者に対し、がんの治療と仕事の両立支援について、県としてどのように取り組んでいるのかお聞きします。

 

▶知事

県では、がんの治療と併せて就労相談についてもワンストップで対応できるよう、県内の19か所のがん診療連携拠点病院のがん相談支援センターのうち1か所に社会保険労務士を配置し、他の18カ所のセンターにも、巡回相談を行っている。
昨年度は事業所への出前講座も含め、800件を超える相談に対応した。

また、昨年度からは、中小企業団体に出向き、事業主の意識啓発を図るとともに、社会保険労務士をアドバイザーとして事業所に派遣し、治療と仕事の両立支援のための勤務制度等の導入に向けた個別相談を実施している。本年10月末までに237事業所に派遣した。

さらに、治療と仕事の両立支援制度を導入するため、就業規則の見直しを行う事業所に対して、1事業所あたり10万円を上限に助成を行っている。本年10月末までに24事業所に対して助成を行った。

 

▶後藤香織

最後に、高校生のがん患者に対する教育上の支援について教育長にお聞きします。

AYA世代のがん患者につきましては、入院期間が長期間に及び、また、短期間で入退院を繰り返すケースも増えていることから、こうした児童生徒が治療を受けながら学業を継続できるよう、入院中・療養中の学習支援体制を整備することが課題となっています。

義務教育段階の小中学生の場合は、病院内に小中学校の特別支援学級としての院内学級が設置されており、児童生徒が治療を受けながら、学習できる環境は整備されていますが、
このような制度がない高校生の場合は、入院が長期化し欠席が続けば、卒業や進級に必要な単位認定にも影響があることから、在籍校と病院等の関係機関が連携し、治療中の生徒が適切な支援を受け、学習を継続できる体制を構築することがより一層求められております。

⑥そこで、まず、県教育委員会として、小児がん等で長期療養している高校生に対する学習支援に具体的にどのように取り組んでいるのかお聞きします。

 

▶県教育長

県立高校においては、長期療養中の生徒の学習ニーズに応えるため、学習支援計画に基づき、教員の派遣やレポート指導などを行うとともに、単位認定の弾力化を図り、病院での学習成果を積極的に評価している。

さらに、今年度から、学習の質をより高めるため、療養中の生徒が自己の体調や治療計画に応じた自主学習ができるよう、授業動画や演習問題が入ったタブレット端末によるサポートを実施している。

今後とも、こうした取り組みの成果を踏まえ、学校と病院等が連携した学習支援をより効果的に実施してまいる。

 

▶後藤香織

次に、本県では、2014年度から、がん教育推進事業を実施し、学校におけるがん教育の推進を図られているとお伺いしております。

⑦そこで、AYA世代の始まりである高校生に対するがん教育の充実に向けてどのように取り組むのかお聞きします。

 

▶県教育長

生徒のがんに対する正しい知識、がん患者への理解及び命の大切さに対する認識を深めさせるため、県立高等学校において、これまで外部講師の派遣や実践研究を行うとともに、その成果をまとめた実践事例集の作成や、教員の研修会を実施してまいった。

このたび、高等学校新学習指導要領において、がん検診の普及や治療法、緩和ケア等が新たに盛り込まれるなど、がんについての指導内容の改善が図られたことから、引き続き、教員の指導力向上に努めるとともに、国や県が作成した指導要領の活用等により、がん教育の更なる充実に努めてまいる。

 

▶後藤香織

ここで1点、要望をさせていただきます。

子宮頸がんの罹患率および乳がんの罹患率・死亡率は年々増加しており、これからの社会を担う世代、また現役世代という人口構造上でも重要な時期であるAYA世代の女性が罹患・死亡することは、ご家族にとっても大変つらく、社会にとっても大きな損失です。

特に、乳がんは早期に発見、治療を行えば、治るといわれており、これまで何度か県議会でも検診受診率等の改善が求められてきました。

しかし未だ低い状況にあることが明らかになりました。知事からも答弁があった通り、無料で受診できるにも関わらず、子宮頸がん検診の無料クーポンは10人に9人が、乳がんは10人に7.5人が未利用ということになります。

その向上の取り組みを具体的に述べられましたが、AYA世代のがんの早期発見を促すためにも、今後はこれまで以上に取り組みを早急に行い、無料クーポン利用率、検診受診率の改善に努めることを強く要望いたします。

また、これからの最先端技術の実用化にも期待をいたしまして、私の一般質問を終わります。

ご清聴ありがとうございました。

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